iDeCoとNISA 老後資金の受け取り方と税金 初心者向けガイド
iDeCoとNISA 積み立てた老後資金はどう受け取る? 税金はかかる? 初心者向けガイド
iDeCoやつみたてNISA、新NISAに関心をお持ちいただき、この記事をお読みくださっていることと思います。これらの制度は、将来の生活資金、特に老後資金を準備するための有効な手段として注目されています。
多くの方が、まず「どうやって始めるの?」「何に投資すればいいの?」といった疑問をお持ちになることでしょう。それらは資産形成の第一歩として非常に大切な視点です。
しかし、実は「積み立てたお金を最終的にどのように受け取るのか」という視点も、制度を理解し、計画的に活用するためには欠かせません。特に、40代後半から50代にかけての世代の方にとっては、受け取りの時期が現実味を帯びてくるからこそ、気になるテーマではないでしょうか。
この記事では、iDeCoとNISAで積み立てた資金の「受け取り方」と、その際に「税金がどうなるのか」について、初心者の方にも分かりやすく解説します。
iDeCoの受け取り方と税金について
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、原則として60歳まで積み立てた資産を引き出すことができない制度です。これは、老後資金を形成するというiDeCoの目的に沿った仕組みです。一定の加入期間を満たせば、60歳以降に積み立てた資産を受け取ることができます。
iDeCoの主な受け取り方法には、以下の3つの選択肢があります。
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一時金として受け取る
- 積み立てた資産を一度にまとめて受け取る方法です。
- この場合、受け取った金額は「退職所得」として扱われます。
- 退職所得には「退職所得控除」という大きな控除枠があり、勤続年数(iDeCoの加入者等期間)に応じて控除額が増えます。この控除枠内に収まれば、税金がかからない、または税負担を大幅に軽減できる可能性があります。
- ただし、同じ年に勤務先からの退職金を受け取る場合は、iDeCoの退職所得と合算して税額が計算されるため注意が必要です。
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年金として受け取る
- 積み立てた資産を分割し、一定期間にわたって少しずつ(例えば5年、10年、20年など)年金形式で受け取る方法です。
- この場合、受け取った金額は「公的年金等の雑所得」として扱われます。
- 公的年金等の雑所得には「公的年金等控除」が適用されます。他の公的年金(国民年金や厚生年金など)と合算して税額が計算されるため、受け取る年金額によっては税金が発生する場合があります。
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一時金と年金を組み合わせて受け取る
- 一部を一時金として受け取り、残りを年金として受け取る方法です。
- 金融機関によって対応が異なりますが、この方法を選ぶことで、退職所得控除と公的年金等控除の両方を活用できる可能性があります。
どの受け取り方を選ぶかによって、かかる税金や、他の所得との兼ね合いが変わってきます。ご自身のその時点での状況(他の退職金や年金の受け取り額など)に合わせて、最も税負担が少なくなる方法を検討することが大切です。
iDeCo受け取り時の注意点:
- 原則60歳まで引き出せません。急な資金が必要になった場合でも、途中で引き出すことは非常に限定的です(障害給付金など、特別なケースのみ)。
- 受け取りを開始できる年齢は、加入者等期間によって異なります(60歳で受け取るには原則10年以上の加入者等期間が必要です)。
- 受け取り方法(一時金、年金、併用)は、運営管理機関(金融機関)によって選択肢が異なる場合があります。
- 具体的な税額計算は複雑なため、必要に応じて税務署や税理士にご相談いただくことも検討できます。
NISAの受け取り方と税金について
NISA(一般NISA、つみたてNISA、そして新しいNISA)で積み立てた資産は、iDeCoとは異なり、原則として非課税期間内であればいつでも自由に引き出すことができます。
これがNISAの大きな特徴の一つです。老後資金だけでなく、教育資金や住宅購入資金など、ライフイベントのための資金準備にも活用しやすい柔軟性があります。
NISA受け取り時の税金:
- NISA口座内で投資した資産から得られた運用益(売却益や分配金・配当金)は、非課税期間内であればいくら利益が出ても税金がかかりません。
- 積み立てた資産を売却して現金として引き出すこと自体に、税金はかかりません。
NISAの非課税期間が終了した資産については、新しいNISA制度での非課税枠への移管(ロールオーバー)や、課税口座(特定口座や一般口座)への移管を選択することになります。課税口座に移管された後の運用益や売却益については、通常の税率(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%の合計20.315%)で税金がかかります。
NISA受け取り時の注意点:
- 非課税期間が終了するタイミングに注意が必要です。非課税期間内に売却益が出ていれば非課税で受け取れますが、期間終了後に課税口座に移管してから売却して利益が出た場合は課税されます。
- 新しいNISA制度では非課税保有期間が無期限化されましたが、旧NISA制度(つみたてNISA20年、一般NISA5年)で投資した資産には、それぞれの非課税期間が適用されます。ご自身の保有資産がどの制度に基づくものか、非課税期間があとどれくらい残っているかを確認しておくと良いでしょう。
iDeCoとNISA 受け取り方の違いが示す活用方法のヒント
iDeCoとNISAの受け取り方の違いをまとめると、以下のようになります。
- iDeCo: 原則60歳まで引き出せないが、受け取り時に税制優遇(退職所得控除や公的年金等控除)がある。完全に老後資金に特化した制度と言えます。
- NISA: 非課税期間内ならいつでも自由に引き出せる。非課税なのは運用益部分。老後資金だけでなく、様々なライフイベントの資金準備にも使える柔軟性の高い制度と言えます。
この違いは、どちらの制度を、どのような目的で活用するかのヒントになります。
例えば、
- 「とにかく老後資金を確実に準備したい。途中で使ってしまう心配がない方が安心」という方は、iDeCoの特性がより合うかもしれません。掛け金が全額所得控除になる税メリットも大きいです。
- 「老後資金も気になるけれど、もしかしたら数年後に大きな資金が必要になるかもしれない。ある程度の流動性も確保しておきたい」という方は、NISAの柔軟性が魅力的に映るかもしれません。
もちろん、どちらか一方だけを選ぶ必要はありません。iDeCoとNISAを組み合わせて活用することで、それぞれのメリットを活かしながら、計画的な資産形成を目指すことも可能です。例えば、iDeCoで揺るぎない老後資金の土台を作りつつ、NISAで教育資金や住宅資金など、近い将来必要になるかもしれない資金を準備するといった考え方もできます。
まとめ:受け取り方も含めて、自分に合った資産形成を
この記事では、iDeCoとNISAで積み立てた資産の「受け取り方」と「税金」に焦点を当てて解説しました。
- iDeCoは原則60歳以降に、一時金、年金、併用のいずれかで受け取り、それぞれ退職所得控除や公的年金等控除の対象となります。
- NISAは非課税期間内であればいつでも自由に引き出せ、運用益は非課税です。
これからiDeCoやNISAを始める方も、すでに始めている方も、「積み立てる」ことだけでなく、「どのように受け取るか」という視点を持つことで、より長期的な視点でご自身の資産形成プランを考えることができるでしょう。
受け取り方によって税金のかかり方が変わるため、将来の受け取り時期が近づいてきたら、その時点での税制やご自身の状況をよく確認し、最適な方法を検討することが大切です。
制度は変更される可能性もありますので、常に最新の情報を確認するように努めてください。もし、どの制度を選べば良いか、どのように活用すれば良いか迷う場合は、金融機関の窓口や専門家などに相談してみるのも良いでしょう。
この記事が、皆さまの資産形成の道のりにおいて、一助となれば幸いです。