【初心者向け】iDeCo NISA 老後資金はいくら目指す? 運用目標の考え方
老後資金への漠然とした不安と投資への関心
将来の生活資金、特に定年後の暮らしについて、漠然とした不安を感じている方は少なくないでしょう。「iDeCo」や「NISA」といった言葉を耳にする機会も増え、これらの制度を利用した資産形成に関心をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、いざ始めてみようと思っても、「そもそもいくら必要なのか」「どれくらい増やせるものなのか」といった具体的なイメージが湧かず、一歩踏み出せずにいるという声も聞かれます。
投資経験がほとんどないという方にとって、「運用」と聞くだけで難しく感じたり、「リスクが怖い」と感じたりするのも自然なことです。特に、これから資産形成を始めようと考えている40代後半から50代の方にとっては、「今から始めても本当に効果があるのだろうか」「短い期間でどれくらいのことができるのだろうか」といった疑問もおありかと思います。
この記事では、iDeCoやNISAを活用して老後資金を準備していくにあたり、投資初心者の方がどのように「運用目標」を設定すれば良いのか、その考え方について分かりやすく解説します。具体的な目標を持つことで、資産形成への取り組みがより明確になり、漠然とした不安の軽減にもつながるはずです。
なぜ運用目標の設定が重要なのか
資産運用を始める前に「運用目標」を設定することは、羅針盤を持つことと同じです。目標がなければ、自分がどの方向へ進んでいるのか、あとどれくらいで目的地にたどり着けるのかが分からず、不安を感じやすくなります。
運用目標を設定することで、以下の点が明確になります。
- 目指すべき金額: 老後資金として具体的にいくら必要なのかが見えてきます。
- 必要な期間: 目標達成までにどのくらいの時間があるのかを把握できます。
- 取るべきリスクの度合い: 目標金額と期間から、どの程度のリスク(そして期待されるリターン)を取る必要があるのかの目安になります。
- 選択する運用方法: 目標に合わせて、どのような運用商品を選び、どのように資産を配分すれば良いかのヒントになります。
特に40代後半〜50代から始める場合、運用できる期間は限られます。そのため、期間を意識した現実的な目標設定がより重要になります。
運用目標を設定するステップ
運用目標は、以下のステップで考えていくと整理しやすいでしょう。
ステップ1:老後資金として必要な金額を考える
まずは、現在の貯蓄や公的年金、退職金などを踏まえ、老後生活で不足すると思われる金額の概算を出してみましょう。具体的な金額は、ご自身のライフスタイルや希望する生活レベルによって大きく異なります。総務省の家計調査などを参考に、平均的な支出を把握することも一つの方法です。
例えば、「公的年金だけでは毎月5万円足りない。65歳で定年後、85歳までの20年間暮らすとして、年間60万円×20年=1,200万円が不足する」といったように、具体的な数字で考えてみましょう。これが、iDeCoやNISAで補いたい「目標金額」の目安になります。
ステップ2:運用できる期間を確認する
iDeCoは原則60歳まで積み立てが可能で、受け取りは原則60歳以降です(通算加入者等期間によっては受け取り開始年齢が異なります)。NISAはいつでも非課税投資が可能ですが、積立期間や非課税期間のルールがあります。ご自身の現在の年齢から、定年(例:60歳や65歳)までの期間、または資金が必要になるまでの期間を確認しましょう。この期間が、資産を運用できる期間となります。
例えば、現在50歳であれば、60歳までiDeCoで運用できる期間は10年となります。NISAであれば、非課税期間や積立期間のルールに合わせて活用できます。
ステップ3:現在の積立額と将来の合計額を概算する
毎月または毎年の積立可能額を決めます。そして、ステップ2で確認した運用期間、ステップ1で設定した目標金額を踏まえ、どの程度の「運用による増加」が必要かを考えます。
例えば、目標金額が1,200万円で、毎月3万円を10年間積み立てるとします。積立総額は3万円×12ヶ月×10年=360万円です。目標の1,200万円には大きく足りません。不足する840万円(1,200万円 - 360万円)を、運用による増加で賄う必要があると考えられます。
ステップ4:目標達成に必要な「年利」を考える
目標金額、積立期間、積立額が決まれば、目標達成のために平均してどのくらいの利回りで運用する必要があるかの目安を計算できます。この必要な利回りが「運用目標」となります。
ただし、ここで算出される「必要な年利」があまりにも高くなる場合は、目標金額を現実的なものに見直したり、積立額を増やしたりすることも検討する必要があります。運用期間が短い場合、運用だけで目標額に到達させるのは難しいことも多いため、積立額をいかに確保するかも重要な要素となります。
「目指せるリターン」の目安と考え方
資産運用における「リターン」とは、投資した資金が運用によって増えることです。一般的に、期待できるリターンが高い運用方法ほど、価格変動のリスクも大きくなる傾向があります。
では、具体的にどのくらいの「年利」を目指せる可能性があるのでしょうか。これは運用する商品や資産配分によって大きく異なりますし、将来の経済状況によって変動するため断定はできません。しかし、長期・分散投資を基本とした場合、歴史的なデータや専門家の見解からは、年間3%〜5%程度の平均的なリターンを目指すことが、一つの現実的な目安として語られることがあります。
- 年利3%: 比較的リスクを抑えた分散投資で目指せる可能性があるリターンです。
- 年利5%: よりリスクを許容できる場合に目指せる可能性があるリターンですが、その分、価格変動のリスクも高まります。
例えば、毎月3万円を10年間積み立てた場合、運用による増加分は年利によって以下のように変化します(あくまで試算であり、運用成果を保証するものではありません)。
- 年利0%(積立のみ):360万円
- 年利3%:約419万円(積立総額360万円 + 運用益約59万円)
- 年利5%:約456万円(積立総額360万円 + 運用益約96万円)
※上記は概算であり、運用方法や市場環境により変動します。
目標設定のステップで算出した「必要な年利」が、このような現実的な目安の範囲内に収まっているかを確認することが重要です。もし必要な年利が高すぎる場合は、目標金額や積立額を見直す必要が出てきます。
iDeCoとNISAで運用目標設定を考える際の視点
iDeCoとNISAは、それぞれ異なる特徴を持つ制度です。運用目標設定においても、それぞれの特性を踏まえることが役立ちます。
- iDeCo: 老後資金に特化した制度であり、原則60歳まで引き出せません。掛金には税制優遇(所得控除)があり、運用益も非課税です。長期的な視点で目標を設定し、掛金の上限額(職業等により異なる)を考慮して積立額を決めます。60歳以降の受け取り方法(一時金か年金か、併用か)も、最終的な目標金額に影響します。
- NISA: iDeCoよりも柔軟性が高く、非課税投資枠の範囲内で様々な金融商品に投資できます。非課税で運用できる期間や金額には上限がありますが、必要に応じて資金を引き出すことも可能です(ただし、非課税枠は再利用できません)。老後資金だけでなく、住宅購入資金や教育資金など、他のライフイベントのための資金も同時に準備したい場合に適しています。運用目標は、非課税期間を意識して設定すると良いでしょう。
両制度を併用する場合、iDeCoで老後資金の基盤をしっかり作りつつ、NISAで老後資金以外の目的や、より柔軟な運用を目指すといったように、それぞれの役割分担を明確にして目標を立てることも有効です。
まとめ:まずは小さな目標から
運用目標の設定は、一見難しく感じられるかもしれませんが、老後資金への不安を和らげ、計画的に資産形成を進めるための第一歩です。まずは「いくら必要か」「いつまでに」といった大まかな目標から考え始め、そこから逆算して「どのくらいのペースで積み立てるか」「どれくらいの増加を期待する必要があるか」といった具体的な数字に落とし込んでいくと良いでしょう。
特に40代後半や50代から始める場合、時間は限られていますが、iDeCoやNISAの税制メリットを最大限に活用することで、効率的な資産形成を目指すことは十分に可能です。大切なのは、完璧な目標を最初から立てようとするのではなく、まずは現実的な範囲で目標を設定し、運用をスタートしてみることです。運用を進める中で、市場環境やご自身の状況に合わせて目標や運用方法を見直していくことも重要です。
この記事が、iDeCoやNISAを活用した資産形成において、ご自身の運用目標を考える一助となれば幸いです。具体的な運用方法や商品選びについては、別の記事や専門家の意見も参考にしながら、ご自身に合った方法を見つけていきましょう。