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iDeCoとNISA 途中でお金が必要になったらどうなる? 知っておきたい引き出しルール

Tags: iDeCo, NISA, 引き出し, 老後資金, 資産形成, 初心者, ライフプラン

iDeCoとNISA 積立中の急な出費、どうすればいい?

老後資金のためにiDeCoやNISAでの資産形成をご検討されている方の中には、「もし積立中に急な出費が発生したり、まとまった資金が必要になったりしたら、積み立てたお金は自由に引き出せるのだろうか?」といった疑問や不安をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。特に40代後半から50代の方にとっては、定年までの期間で予期せぬライフイベントが発生する可能性も考慮しておきたい点でしょう。

この疑問は、iDeCoとNISAの制度設計における重要な違いに関わってきます。どちらの制度を選ぶか、あるいは両方をどのように活用するかを判断する上で、資金の引き出しルールを理解しておくことは非常に大切です。

この記事では、iDeCoとNISAそれぞれについて、積立期間中に資金が必要になった場合の取り扱いと、知っておくべき注意点について分かりやすく解説します。

iDeCo(イデコ) 積立中のお金は原則引き出せません

まず、iDeCoについてご説明します。

iDeCoは、自分で掛金を拠出し、自分で運用方法を選び、将来受け取る年金(または一時金)を形成する私的年金制度です。この「老後のための年金制度」という性質上、積み立てたお金は原則として60歳になるまで引き出すことができません

これは、iDeCoが税制優遇を通じて国民の自助努力による老後資金の確保を目的としているためです。途中で安易に引き出せてしまうと、老後資金として残らない可能性があるため、このような制約が設けられています。

例外的に引き出しが認められる「脱退一時金」

ごく限られた条件を満たす場合にのみ、「脱退一時金」として60歳より前に引き出しが認められるケースがあります。しかし、この要件は非常に厳しく、具体的には以下の条件すべてを満たす必要があります(2024年現在の主な要件)。

ご覧のように、これは一般的な理由(例:住宅購入資金、教育資金、急な病気や失業による生活費など)での資金需要には対応できない厳しい要件です。

したがって、iDeCoで積み立てた資金は、基本的に60歳までは「引き出せないお金」として考えておく必要があります。この点は、iDeCo最大の注意点の一つと言えるでしょう。

NISA(ニーサ) 積立中のお金は基本的にいつでも引き出せます

次に、NISAについてご説明します。

NISAは、投資によって得られた運用益(配当金や売却益)にかかる税金が非課税になる制度です。iDeCoのような私的年金制度ではなく、あくまで資産形成を応援するための「非課税制度」という位置づけです。

そのため、NISA口座で運用している金融商品は、原則としていつでも売却し、現金として引き出すことができます。iDeCoのような厳しい引き出し制限はありません。

引き出し時の注意点

ただし、NISA口座から金融商品を売却して資金を引き出す際には、以下の点を理解しておく必要があります。

  1. 非課税枠の再利用はできない: NISA口座には年間および生涯の非課税投資枠の上限が定められています。一度その枠を使って購入した商品を売却して資金を引き出しても、その売却分の非課税枠が復活して再度投資に使えるわけではありません。例えば、100万円の非課税枠を使って投資した商品を売却した場合、その100万円分の枠は生涯投資枠から減少したままとなり、空いた枠に改めて投資することはできません。
  2. 含み損がある場合の売却: 資金が必要で商品を売却する際に、もし購入時よりも価格が下がっている(含み損がある)状態であれば、損失が確定してしまいます。本来なら長期保有することで回復を目指したいところでも、資金が必要な場合は損切り(損失を確定させる売却)をせざるを得ない可能性があります。
  3. 課税口座への払い出し: NISA口座から資金を引き出す際には、保有する商品を売却し、その売却代金を証券会社の口座や指定の銀行口座に払い出す手続きが必要になります。

NISAはiDeCoに比べて資金の流動性が高い点がメリットと言えますが、非課税枠は使ったら終わり、という点は注意が必要です。

40代・50代からの資産形成における考慮点

40代後半や50代からiDeCoやNISAを始める場合、老後までの期間が比較的限られているため、資金の流動性についてより慎重に考える必要があります。

ご自身のライフプラン(今後発生しうる大きな支出など)や、現在の貯蓄状況(すぐに使えるお金がどのくらいあるか)を踏まえて、どちらの制度が合っているか、あるいは両方をどのようなバランスで利用するかを検討することが大切です。

生活防衛資金として、少なくとも生活費の3ヶ月〜半年分程度はすぐに引き出せる普通預金などに置いておくことをお勧めします。その上で、将来のための資産形成としてiDeCoやNISAを活用することを考えると、急な出費への対応と老後資金の確保を両立しやすくなります。

まとめ

iDeCoとNISAは、どちらも資産形成を支援する素晴らしい制度ですが、積立中の資金引き出しに関するルールは大きく異なります。

ご自身の現在の状況、今後のライフプラン、そして「すぐに使えるお金」がどのくらい必要かなどを考慮し、ご自身に合った制度選びや積立計画を立てることが重要です。迷う場合は、金融機関の窓口やファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談してみるのも良いでしょう。無理のない範囲で、着実に将来のための資産形成を進めていきましょう。