iDeCo・NISAで選ぶべき運用商品とは? 初心者のための商品選びガイド
iDeCo・NISAでの運用商品選び、何から考えれば良いのか
老後資金や将来の資産形成のために、iDeCoやNISAへの関心をお持ちの方は多いかと思います。いざ始めてみようと思っても、「どんな商品を選んだら良いのだろう?」「たくさんあってよく分からない」「失敗するのが怖い」と感じて、なかなか一歩を踏み出せないという声もよく耳にします。
特に、これまで投資の経験がほとんどない方にとって、運用商品選びは最初のハードルかもしれません。しかし、ご安心ください。iDeCoやNISAで選べる商品は、ある程度の傾向があり、基本的な考え方を知っていれば、ご自身に合った商品を選ぶことができます。
この記事では、iDeCoやNISAで運用商品を選ぶ際に知っておきたい基本的な知識と、初心者がどのように考えれば良いのかを分かりやすく解説します。
iDeCo・NISAで選べる運用商品の種類
まず、iDeCoやNISAで主に選べる運用商品にはどのような種類があるのかを見ていきましょう。金融機関によって取り扱っている商品は異なりますが、大きく分けると以下のようになります。
- 投資信託: 多くの投資家から集めた資金を一つにまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資・運用する商品です。運用成果に応じて分配金が支払われたり、基準価額(いわゆる値段)が変動したりします。iDeCoやNISAの対象商品の中心となります。
- 保険商品(iDeCoのみ): 確定年金保険や積立利率変動型終身保険など、元本確保型に近い性質を持つ保険商品です。iDeCoでは選択肢の一つとして用意されている場合があります。
- 預貯金(iDeCoのみ): 定期預金など、元本が保証されている商品です。iDeCoでは投資信託や保険商品と並んで選択肢の一つとなることがあります。
この中でも、iDeCo・NISAの非課税メリットを活かした資産形成の主役となるのは投資信託です。次の章では、投資信託についてもう少し詳しく見ていきます。
投資信託の種類と特徴
投資信託は、投資対象や運用方針によって様々な種類があります。代表的なものをいくつかご紹介します。
- 国内株式型: 日本国内の上場企業の株式に投資します。日経平均株価やTOPIXといった株価指数に連動することを目指す「インデックス型」と、指数を上回る成績を目指す「アクティブ型」があります。
- 海外株式型: アメリカや世界各国の企業の株式に投資します。S&P500や全世界株式指数といった指数に連動するインデックス型が人気です。
- 国内債券型: 日本国の国債や企業の社債などに投資します。一般的に株式よりも価格変動リスクは小さいとされています。
- 海外債券型: 海外の国債や企業の社債などに投資します。為替変動リスクも伴います。
- バランス型: 複数の資産(国内株式、海外株式、国内債券、海外債券、不動産投資信託(REIT)など)を組み合わせて運用します。自分で複数の投資信託を選ぶ手間を省きたい場合に便利です。特定の指数に連動するインデックス型と、プロが資産配分を決めるアクティブ型があります。
初心者が投資信託を選ぶ際の基本的な考え方
たくさんの種類がある投資信託の中から、どのように自分に合ったものを選べば良いのでしょうか。以下の点を参考に考えてみましょう。
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ご自身の「リスク許容度」を考える 投資信託の価格は日々変動します。短期間で大きく値上がりすることもあれば、値下がりすることもあります。この価格変動の度合いを「リスク」と呼びます。ご自身が「どれくらい価格が下がっても冷静でいられるか」「一時的な評価額のマイナスを受け入れられるか」を考えてみましょう。
- 価格変動が大きい傾向があるのは「株式型」、小さい傾向があるのは「債券型」や「バランス型」です。
- 老後資金など、数十年にわたって積立・運用できるのであれば、一時的な価格変動があっても長く続けることでリスクを抑えやすくなります。40代後半や50代から始められる方も、運用期間が10年以上確保できる場合が多いかと思いますので、この「長期・積立・分散」の考え方が重要になります。
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「分散投資」を心がける 一つの資産や一つの国・地域だけに集中して投資するのではなく、複数の資産(株式、債券など)や複数の国・地域に分けて投資することを「分散投資」といいます。これにより、どれか一つの資産や地域が値下がりしても、他の資産でカバーできる可能性があり、リスクを軽減する効果が期待できます。
- 先ほどご紹介した「バランス型」の投資信託は、最初から様々な資産に分散投資するように設計されています。
- ご自身で複数の投資信託(例:国内株式型と海外債券型など)を組み合わせて分散投資することも可能です。
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「コスト(信託報酬)」を確認する 投資信託を保有している間、運用管理費用として「信託報酬」という手数料がかかります。これは運用会社や販売会社などに支払われる費用で、投資信託の純資産総額に対して日々一定の率で差し引かれます。
- 信託報酬は、商品の利回りから自動的に差し引かれるため、意識しにくいですが、長期間運用するほどその差が大きくなります。
- 特にインデックス型の投資信託は、特定の指数に連動することを目指すため、どの金融機関の商品を選んでも大きな運用成果の差は出にくい傾向があります。そのため、信託報酬が低い商品を選ぶことが、手取りの運用成果を増やす上で重要になります。
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「運用期間」を考慮する iDeCoやNISAは長期での資産形成を目的とした制度です。特にiDeCoは原則60歳まで引き出せません。NISAも非課税期間が決まっています(新NISAでは無期限)。ご自身の運用できる期間を踏まえて、リスクの取り方を調整することを検討しましょう。
- 運用期間が長いほど、一時的な価格下落から回復する時間が十分にあるため、比較的リスクを取った運用(例:株式の割合を高くする)もしやすいと考えられます。
- 逆に、運用期間があまり長くない場合や、近い将来に資金が必要になる可能性がある場合は、リスクを抑えた運用(例:債券の割合を高くする、バランス型を選ぶ)を検討する方が良いかもしれません。
運用商品選びの具体的なステップ
これらの考え方をもとに、商品選びを進める際の具体的なステップをご紹介します。
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目標と期間を設定する:
- 何のために資金を準備したいのか(老後資金、住宅資金など)
- いつ頃までにいくらくらい必要になりそうか
- iDeCoやNISAで運用できる期間はどれくらいか
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リスク許容度を自己診断する:
- 仮に投資した金額が一時的に20%減ってしまったら、どう感じるか? (慌てる、不安になる、気にしないなど)
- 過去の大きな市場変動(リーマンショックなど)で、価格が半分以下になった金融商品もあったことを知っておく。
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金融機関のサイトで取扱商品を確認する:
- iDeCoやNISAを取り扱っている金融機関(証券会社や銀行など)のウェブサイトで、どのような運用商品があるかを見てみましょう。
- 特に、投資信託のラインナップを確認します。インデックス型、アクティブ型、バランス型など、どのような種類があるかを見てみます。
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商品の詳細情報を確認する:
- 気になる商品が見つかったら、「目論見書(もくろくしょ)」や「交付目論見書」という書類を確認します。これは商品の説明書のようなもので、投資対象、運用方針、リスク、費用(信託報酬など)といった重要な情報が記載されています。
- 過去の運用実績(あくまで過去のものであり、将来を保証するものではありません)や、同じ分類の他の商品と比べて信託報酬が高いか低いかなどを比較してみることも有効です。
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ポートフォリオ(資産の組み合わせ)を考える:
- 一つの商品に全てを投じるのではなく、複数の商品を組み合わせて分散投資することを検討しましょう。バランス型一本にするか、あるいは国内外の株式型と債券型を組み合わせるかなど、ご自身の考え方やリスク許容度に合わせて組み合わせを考えます。
迷ったら「バランス型」や「低コストなインデックスファンド」から
「どうしても商品選びが難しい」と感じる場合は、以下の選択肢から検討を始めてみるのも一つの方法です。
- バランス型投資信託: 国内外の株式や債券などに自動的に分散投資してくれるため、自分で複数の商品を選ぶ手間が省けます。様々な資産配分のバランス型があるので、ご自身の目標やリスク許容度に合ったものを選べます。
- 低コストなインデックスファンド: 特定の株価指数や債券指数に連動することを目指す投資信託の中でも、信託報酬が低い商品を選ぶ方法です。例えば、全世界株式指数やS&P500指数などに連動する低コストなインデックスファンドは、長期の積立投資で選ばれることが多い選択肢の一つです。
いずれにしても、ご自身が「この商品なら内容を理解できる」「これなら続けられそうだ」と思えるものを選ぶことが大切です。
まとめ:自分に合った商品を見つける第一歩を踏み出しましょう
iDeCoやNISAの運用商品選びは、決して難しいことばかりではありません。ご自身の目標やリスクに対する考え方を整理し、どのような商品があるのか、そして「分散投資」や「コスト」といった基本的な考え方を理解することが第一歩です。
この記事を参考に、まずは金融機関のウェブサイトでどのような商品が用意されているかを見てみたり、目論見書を確認してみたりすることから始めてみてはいかがでしょうか。無理のない範囲で、ご自身に合った資産形成を進めていきましょう。