【初心者向け】iDeCo・NISAのリスクは? 抑えながら始める方法
iDeCo・NISAに関心があるけれど、投資のリスクが怖い方へ
老後資金の準備や将来への備えとして、iDeCoやつみたてNISA(新しいNISA制度も始まります)といった非課税制度に関心を持つ方が増えています。税制優遇を受けながら効率的に資産形成ができるこれらの制度は、多くの方にとって有効な選択肢となり得ます。
一方で、「投資は怖い」「損をするのが不安」といった漠然としたイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。特に、これまで投資経験がほとんどないという方にとっては、資産が減ってしまう可能性に対して大きな不安を感じるのも自然なことです。
しかし、投資における「リスク」を正しく理解し、いくつかの基本的な考え方を取り入れることで、その不安を和らげ、ご自身のペースで無理なく資産形成を進めることが可能です。
この記事では、iDeCoやNISAで資産運用を始めるにあたり、投資のリスクとは何か、そしてそのリスクをどのように捉え、軽減しながら取り組んでいけば良いのかについて、初心者の方にも分かりやすいように解説します。
投資における「リスク」とは「危険」ではなく「不確実性」
私たちが日常会話で使う「リスク」という言葉は、「危険」や「悪いことが起こる可能性」といったネガティブな意味合いで使われることが多いかもしれません。しかし、資産運用の世界で言う「リスク」は、少し意味合いが異なります。
資産運用におけるリスクとは、「将来得られるリターン(運用成果)が不確実であること」、つまり「成果の振れ幅の大きさ」を指します。
- リスクが大きい: 運用成果が大きくプラスになる可能性もあるが、大きくマイナスになる可能性もある(振れ幅が大きい)。
- リスクが小さい: 運用成果の振れ幅が比較的小さい。大きなプラスも期待しにくいが、大きなマイナスになる可能性も比較的低い。
つまり、リターンを得るためには、ある程度のリスク(不確実性)を受け入れる必要がある、というのが投資の基本的な考え方です。iDeCoやNISAで投資信託などを選んで運用する場合も、この「不確実性」と向き合うことになります。
具体的なリスクの種類としては、以下のようなものが挙げられます。
- 価格変動リスク: 株式や投資信託などの価格が、景気や企業の業績、市場の状況などによって変動する可能性。
- 金利変動リスク: 市場の金利が変動することで、主に債券の価格が変動する可能性。
- 為替変動リスク: 外国の資産に投資する場合、為替レートの変動によって資産の価値が変わる可能性。
これらのリスクがあるため、運用している資産の価値は日々変動します。この変動そのものが、投資に対する不安につながることが多いでしょう。
iDeCo・NISAのリスクを「抑える」基本的な考え方
リスクがあると聞くと、やはり不安を感じるかもしれません。しかし、iDeCoやNISAを活用した資産形成においては、このリスクを上手に管理し、軽減していくための基本的な考え方があります。それは主に以下の3つです。
- 長期投資
- 積立投資(時間分散)
- 分散投資(資産・地域分散)
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1. 長期投資の効果
iDeCoやNISAは、どちらも比較的長い期間をかけて資産形成を行うための制度設計になっています。特にiDeCoは原則60歳まで引き出せないため、おのずと長期での運用になります。
投資においては、運用期間が長くなるほど、短期的な価格変動の影響を受けにくくなる傾向があります。市場は短期的に見ると大きく変動することがありますが、長い目で見ると経済成長とともに資産の価値も成長していく可能性が高まります。
例えば、過去のデータを見ると、世界の株式や債券といった資産クラスは、短い期間では大きく値下がりした局面もありますが、20年、30年といった長期で保有した場合の運用成果は安定し、プラスのリターンとなる確率が高まっています。
今40代後半や50代の方でも、老後まで10年、15年、あるいはそれ以上の運用期間を確保できる場合があります。この「時間」を味方につけることが、リスク軽減につながる重要なポイントです。
2. 積立投資(時間分散)の効果
一度にまとまった金額を投資するのではなく、毎月コツコツと一定額を積み立てていくのが積立投資です。iDeCoもNISA(特に積立投資枠)も、積立投資をしやすい仕組みになっています。
積立投資を行うと、「ドルコスト平均法」という効果が期待できます。これは、価格が高い時には少なく買い、価格が低い時には多く買うことになるため、平均購入単価を平準化できるという考え方です。
市場の価格が変動しても、慌てて売買することなく淡々と積立を続けることで、高値掴みのリスクを抑え、基準価額が下がった時には多くの口数を購入できます。これも、長期的な視点で見ればリスクを軽減し、安定した成果につなげる効果があります。
3. 分散投資(資産・地域分散)の効果
「卵を一つのカゴに盛るな」という格言があるように、一つの種類の資産に集中して投資するのではなく、様々な資産に分けて投資することがリスク軽減につながります。
例えば、国内株式だけでなく海外株式にも、あるいは株式だけでなく債券にも投資するといった形で、異なる値動きをする傾向のある資産に分散して投資することで、どれか一つの資産の価格が大きく下落しても、全体の資産価値への影響を和らげることができます。
iDeCoやNISAで選べる投資信託には、国内外の複数の資産に分散投資を行うように設計されたものも多くあります。これらのファンドを選ぶことで、ご自身で個別の資産を選ぶ手間をかけずに、手軽に分散投資の効果を得られます。
ご自身の「リスク許容度」を知ることも大切
リスクを軽減する考え方を理解した上で、もう一つ大切なのは、ご自身の「リスク許容度」を知ることです。リスク許容度とは、「どの程度まで資産の価値が下落しても精神的に耐えられるか」「運用期間中に必要となる可能性がある資金はどれくらいか」といった、ご自身の状況や考え方に基づいたリスクの受け入れ度合いです。
- リスク許容度が高い方: 資産価値の大きな変動もある程度受け入れられる。高いリターンを目指して、リスクが比較的高めの資産(例:新興国株式など)への投資割合を増やす選択肢も考えられる。
- リスク許容度が低い方: 資産価値の大きな下落は避けたい。比較的リスクが低い資産(例:先進国債券など)への投資割合を増やす、あるいはバランス型ファンドを選ぶなどの選択肢が考えられる。
ご自身の年齢や現在の資産状況、将来のライフプランなどを考慮して、無理なく続けられる範囲でリスクを取り入れることが重要です。40代後半や50代から始める場合、運用期間が20代や30代から始める方と比べて短くなる可能性が高いですが、それでも長期投資や積立投資、分散投資の考え方を活用することで、リスクを抑えながら着実に資産形成を目指すことは十分に可能です。
まとめ:リスクを理解し、対策を取ることで安心して始められる
iDeCoやNISAは、税制優遇を受けながら将来のための資産を形成できる魅力的な制度です。投資に「リスク」(不確実性)はつきものですが、その意味を正しく理解し、
- 長期投資
- 積立投資(時間分散)
- 分散投資(資産・地域分散)
といった基本的な考え方を実践することで、その影響を和らげることができます。
今から始めることに遅すぎるということはありません。ご自身のライフプランやリスク許容度に合わせて、無理のない範囲で積立額や投資対象を選び、まずは少額から始めてみることも有効です。
この記事が、iDeCoやNISAでの資産形成におけるリスクに対する不安を少しでも軽減し、安心して第一歩を踏み出すための一助となれば幸いです。具体的な商品選びやポートフォリオの組み方については、ご自身の状況に合わせてさらに情報収集をしたり、必要に応じて専門家へ相談したりすることもご検討ください。