iDeCo NISA 始めたら終わりじゃない? 積立後のチェックと見直し 初心者ガイド
iDeCoやNISA、始めてからの「その後」について知っておきたいこと
老後の生活資金や将来への備えとして、iDeCoやNISAに関心を持ち、実際に始めてみよう、あるいはすでに始めてみたという方もいらっしゃるかと思います。制度を選び、金融機関を決めて、手続きを終えたときには、まずは大きな一歩を踏み出した達成感があるかもしれません。
ですが、iDeCoやNISAは「始めて終わり」ではなく、その後も適切に「続ける」ことが大切になります。長期にわたる積立投資では、始めた後の運用状況を確認したり、ご自身の状況に合わせて積立金額や運用商品を見直したりすることが、目標達成に向けて有効な場合があります。
「始めた後のことはよく分からない」「難しそうだからそのままにしている」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。この記事では、iDeCoやNISAを始めた後に確認しておきたいポイントや、必要に応じて検討したい見直しについて、投資初心者の方向けに分かりやすく解説します。
なぜ積立後のチェックや見直しが必要なのでしょうか?
iDeCoやNISAは、一般的に長い期間をかけて資産を育てることを目的とした制度です。この長い期間の間には、さまざまな変化が起こり得ます。
- 市場の状況は常に変動します 投資した商品の価格は、景気や企業の業績、国内外の出来事など、さまざまな要因で日々変動します。ご自身の資産が今どのような状況にあるのかを知ることは、漠然とした不安を解消するためにも重要です。
- ご自身のライフプランや収入も変化します 定年までの年数が変化したり、家族構成が変わったり、収入が増減したりする可能性もあります。ご自身のライフステージの変化に合わせて、無理のない範囲で積立を続けられるように、計画を見直す必要が出てくるかもしれません。
- 制度が改正されることもあります iDeCoやNISAの制度自体が、将来的に改正される可能性もゼロではありません。制度変更があった場合に、ご自身の運用にどう影響するかを理解しておくことも大切です。
これらの変化に対応し、より着実に将来の目標に近づくためには、定期的にご自身の運用状況を確認し、必要に応じて見直しを行うことが有効です。適切な管理を怠ってしまうと、当初の目標から大きく乖離してしまうリスクも考えられます。
具体的に何をチェックすれば良いのでしょうか?
iDeCoやNISAの運用状況を確認する際は、主に以下の点に注目してみましょう。
1. 現在の運用状況(資産評価額と損益)
金融機関から定期的に送られてくる取引報告書や、金融機関のウェブサイトにあるご自身のマイページなどで、現在の資産評価額(今売却したら手元に残る金額)や、これまでの損益(投資元本に対してどれだけ増減しているか)を確認することができます。
一時的にマイナスになっているのを見て不安になることもあるかもしれませんが、長期投資においては価格変動は避けられないものです。短期的な損益に一喜一憂せず、全体の資産がどのように推移しているか、長期的な視点で眺めることが大切です。
2. 資産配分(どのような商品にどれだけ投資しているか)
ご自身が投資している商品(投資信託など)の種類とその比率を確認しましょう。「国内外の株式に何割、債券に何割、バランス型ファンドに何割」といった形です。これを「資産配分」と呼びます。
運用を続けていると、値動きによってこの比率が変化していきます。例えば、株式市場が好調だと、株式の比率が当初より高くなっているといった状況が考えられます。
当初ご自身が設定したリスクの許容度や目標に合った資産配分になっているかを確認しましょう。
3. ご自身のライフプランや積立ペース
運用状況だけでなく、ご自身の現在の収入や支出、そして将来の予定(いつ頃まで積立を続ける予定か、いつ頃から老後資金が必要になるかなど)を改めて確認してみましょう。
当初決めた積立金額は、現在の家計状況に合っているでしょうか。無理なく続けられる金額になっているか、あるいはもう少し余裕がある場合は増額を検討できるかなど、積立ペースが適切かを見直すことも重要です。
どのような見直しができるのでしょうか?
チェックの結果、必要だと感じた場合には、以下のような見直しを検討することができます。
1. 積立金額の変更
収入が増減したり、ライフイベントによって支出が変わったりした場合に、積立金額を変更することができます。
- iDeCoの場合: 年に1回だけ、積立金額を変更できる時期があります(通常は4月から翌年3月までの1年間で、その間に1回だけ変更可能)。ただし、積立金額には上限額(拠出限度額)がありますので、その範囲内での変更となります。手続きは、ご契約の金融機関を通じて行います。
- NISAの場合: NISAには毎月の積立義務はありません。非課税投資枠の範囲内であれば、いつでも積立金額を自由に変えることができます。もちろん、一時的に積立を停止したり、再開したりすることも可能です。
ご自身の家計状況に合わせて、無理のない金額で続けることが最も重要です。
2. 運用商品の変更(スイッチング・配分変更)
運用している商品を別の商品に変えたり、今後の積立で購入する商品の比率を変えたりすることも可能です。
- スイッチング: 現在保有している運用商品を売却し、その資金で別の運用商品を購入することです。例えば、保有しているAという投資信託を売却し、Bという投資信託を購入するといったケースです。主にiDeCoで行われます。
- 配分変更: 今後、新たに積立を行う資金で、どの運用商品をどのような比率で購入するかを変更することです。すでに積み立ててある分には影響せず、これからの積立分に対して適用されます。iDeCoでもNISAでも行うことができます。
これらの変更は、例えば、ご自身の目標とする資産配分から大きく乖離してしまった場合や、当初選んだ商品の運用方針が変わってしまった場合などに検討するものです。ただし、頻繁に売買を繰り返すと手数料がかかったり、市場の短期的な動きに振り回されてしまう可能性もありますので、慎重に検討することが大切です。
3. (iDeCoの場合)運用期間の見直し
iDeCoは原則として60歳まで積み立てを行い、60歳以降に受け取りを開始する制度ですが、加入期間によっては60歳以降も積み立てを続けたり、受け取り開始を遅らせたりすることが可能な場合があります。ご自身の働き方や、いつ頃から資金が必要かといった状況に合わせて、こうした運用期間の選択肢についても確認しておくと良いでしょう。
4. (NISAの場合)金融機関の変更
NISAの場合、年に1回だけ、利用する金融機関を変更することも可能です。現在利用している金融機関のサービスや商品のラインナップに不満がある場合などに検討できます。ただし、手続きに手間がかかることや、変更した年にすでに投資を行っている場合は変更できないなどの注意点がありますので、よく調べてから判断しましょう。
見直しを行う上での注意点
見直しを検討する際には、以下の点に注意しましょう。
- 感情的な判断を避ける: 市場が大きく下落したからといって、慌ててすべて売却すると、損失を確定させてしまうことになります。逆に、市場が過熱しているときにリスクの高い商品に飛びつくのも危険です。冷静に、長期的な視点を持って判断することが重要です。
- 長期・分散・積立の基本を大切に: 相場の変動に左右されすぎず、長期にわたって、複数の資産に分散して、定期的に積立を行うという基本的な考え方を忘れずに続けることが、リスクを抑えながら資産を育てるための王道と言われます。
- 手数料も考慮する: 運用商品の変更(スイッチング)などには、手数料がかかる場合があります。手数料の額も確認した上で判断しましょう。
- 分からないことは専門家に相談することも検討する: 金融機関の窓口やコールセンター、ファイナンシャルプランナーなどに相談することも有効です。専門家のアドバイスを参考にすることで、よりご自身に合った判断ができるかもしれません。
まとめ:続けること、そして知ることが大切です
iDeCoやNISAは、始めた後も、定期的なチェックと必要に応じた見直しを行うことで、より効果的に老後資金や将来のための資産形成を進めることができます。
「運用状況を確認する」「積立金額や運用商品を検討する」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、まずはご自身のマイページを見てみる、金融機関からの郵送物を開けてみる、といった簡単なことから始めてみましょう。そして、ご自身の状況に変化があった際には、「何か見直しが必要かな?」と少し立ち止まって考えてみることが大切です。
もちろん、「絶対にこうしなければならない」というルールがあるわけではありません。ご自身のペースで、無理なく、そして「知ること」を楽しみながら、iDeCoやNISAと向き合っていくことが、長期にわたる資産形成の成功につながるのではないでしょうか。
もし、どのような見直しが必要か判断に迷う場合は、一人で抱え込まず、信頼できる情報源を探したり、金融機関に相談したりすることも有効な選択肢です。